振り子式スイング(詳細版)
1.基本的な考え方

パッティングに求められる要素は、
a)方向の再現性
b)
距離の再現性

これらを満たすには、腕や手の力加減でボールを打つのではなく、自然法則に委ねた打法が色々な面で再現性を高くします。
自然法則の打法とは、両腕の動きとパターを一体にした「振り子」を回転軸から吊るし、振り子先端の“り”又は“リズム”でスイングする「振り子(単振動)」式スイングです。
即ち、
両腕一体の動きで方向の精度を高め、単振動のバックスイング量で距離コントロールの精度を高めます。

*左右の腕の動きがばらばらになると、打出し方向が安定しません。


2.スングの特性

1)両肩の可動範囲
スムーズに振れる範囲は体幹の捩じれ角を加えると±約23°
です。この振り幅は身長170cmの場合のパターヘッド移動量換算で±約50cm程度に相当します。パット前の構え方(右利き)についてご説明します。

A. 右腕でパター重量を支える構え

右図に示す様に、左肩を上げた状態でパターを持つ場合、スムーズに動く肩の範囲内で最大のバックスイング量80〜cmを取る事が可能です。

この利点は方向を狙った姿勢のまま、パットの構えに入り、構えた時の右腕の形をキープしたまま、肩回転(体幹の捩じり)でボールを打つ事が出来ます。


A'. 左腕でパター重量を支える構え
基本は左右の腕を切り替えればAと同じ。ただ意識的に左肩のUP/DOWNで振り子を振り、振り子の形を崩さずにボールを打つのは同じ。

B. パターを両腕均等で吊るす構え

右図に示す方法は、構えた時にパターを吊るす様に持ち、左右の腕・手に均等の負荷を掛けてスイングします。

振り幅がスムーズに動く肩の可動範囲を越えると、両肩を支点にした腕だけの回転運動が加わり、更に両肘の屈伸も入って五角形が崩れます(首付根の1軸回転→両肩の2軸回転)。

グリップ力を低くしておくと肘の動きが良く、ダウンスイングの過程で生じるヘッドの遠心力と重力で、振り子は自然と初期の五角形に戻ってボールを打ちます。

しかしバックスイング起動時に意識して肩回転をさせないと、右腕が先行して引き上げられ、左手首の角度変化や、右片腕のみのダウンスイング(特にロングパットの時に左腕が進路妨害)を起こします。

これはパッティングの構えの基本であり、全ての距離に対応できますが、大きな遠心力が生じるロングパットに最適で、振り子に安定した円弧Rが作り出されます。


A、Bの共通点は、体幹の捩じれによる振り子のスイングと、グリップ握力を必要最少限にする事です。

2)大きな振り幅による振り子の変形
ミドルパットまでは概ねバックスイング量が50〜60cm範囲に入る為、振り子の形を終始崩さずにパットします。

ロングパットでスムーズな肩回転範囲を越えたバックスイング量を取る場合は、肘の屈伸動作を入れて大きな振り幅を取ります。

ダウンスイングの途中で働く大きな遠心力とパター重量は、肘の曲げを自然に伸ばし、構えた時の振り子の形でボールを打ちます。

大きな振幅をとっても、半径Rは常に一定です。その為には、グリップの握力を低く抑え、腕の筋力はパター重量を支える程度にします。



<ダウンスイングの速度不足>
実際のパッティング動作を見ると、質量の大きい肩をダウンスイングの短い時間で、理想とするパターのトップスピードに同期する事が出来ず、パットの距離が十分に得られない場合があります。特にパターを持つ手の握力が強くなるとこの傾向が出ます。強く持つと指先の感圧センサーが鈍くなり、パターグリップの動きが読み取れなくなって肩が動かない場合や、右片腕スイングによって左腕がスイングの妨げになる場合等があります。

<DMMPの特長>
個人のスイング特性が例え速度不足であっても、そのスイングを基準にグリップ目盛を個人用に合せ込む(キャリブレーション)ので、プレーの実質的な障害にはなりません。カップまでの距離計測で得た推奨バックスイング量が、相対的に大きく測れるだけです。



3)スイングは複合型
パッティングスタイルは多種多様ですが、多くのスイングは「扇型」、「台形型」と「複合型」が考えられます。
「複合型」はロングパットで振り幅を大きくとる場合に使われます。「扇型」を基本に「台形型」を加味して、振り幅を大きくした時のパターの早い動きに振り子を追従し易くします。

<ダウンスイングの速度不足 補正法>
扇型スイングで生じるトップスピードの不足分は、両腕の台形型スイング(肘の僅かな屈伸)で加速する事が出来ます。即ち、ダウンスイングからフォロースイングに切り替わる時、左肩でパターを引上げながら質量の小さい右手で打出し方向へ送り、パターヘッドのトップスピードをボールに伝えます。

この方法だと、ボールの転がる距離は概ね1割程度伸びますので、グリーンの状況に合せて(例えば逆目、グリーンの速度が遅い、等)使い分けると便利です。
ただしグリーンが非常に速い場合は、パターの送りだす操作が転がる距離のばらつきを助長するため控えます。

**「左目の片隅でカップを捉えながら、決めたラインに低く長くヘッドを出すのが技術的なコツだ。心理面ではあまり長時間ラインに視線を凝らしてはいけない。早く決めて距離だけ届かせること」ウィリー・パーク・ジュニア**

   


3.パターグリップの持ち方

オーバーラッピング方式の、特に左右の腕でパターを吊るす基本形をご説明します。逆オーバーラッピング方式については市販の解説書をご利用下さい。
    左手左手グリップの持ち方  右手右手グリップの持ち方

左手:
 中指、薬指、小指の付け根付近にグリップ下の稜線を当て、親指全体をグリップ上面に乗せます。手の平はグリップ側面に当てて軽く握りますが、その握力は多くともパター重量を片手で支える程度です。構えの姿勢で左腕1本で肘以外には力を入れずにパターを吊った時、ヘッドの向きが狙った方向で安定する様に、グリップの握りを微調整します。脇の開きも自然に任せます。

右手:
 手首を軽く下方に捩じり、人差し指、中指、薬指でパターの「おじぎ」を下から受けます。親指付根は左親指の一部に被せてグリップ上面に乗せ、手の平はグリップ側面に向けて軽く握ります。構えの姿勢で右腕1本で肘以外には力を入れずにパターを吊った時、ヘッドの向きが狙った方向で安定する様に、グリップの握りを微調整します。脇の開きも自然に任せます。

「手首の曲げ角」はスイング中に変えると、ヘッドフェースの向きを直接変えてしまうため厳禁です。


4.スタンスの取り方
  1. 右手でパターを持ち、ボールから約1〜cm程度後方にパターヘッドを置いて打出し方向を定めます。
    ・キャリブレーションの時は、ボール後方1〜cmにヘッドを置いてパットを行い、パターを持つ腕の長さで目盛と距離を合せます。
    ・実戦ではボール後方3〜4cmにヘッドを置いてパットを行い、カップオーバー10数cmを常に確保する方法があります。
  2. ヘッドは体中央に置いて打出し方向と平行に立ち、両足を肩幅程度に広げます。
     (体中心から右足外側までを30cmにしておくと、推奨バックスイング量の目測に便利です)
  3. ボールを上からのぞく様に腰を約30〜°曲げ、ボール中心は利目の真下ラインもしくはやや内寄りにします。
             
  1. グリップを左手で軽く掴み、両手で一旦シャフトを立てた後に、オーバーラッピングは左腕を使って、逆オーバーラッピングは右腕を使ってパターを約1cm程度引き上げます。この時、両手首は軽く縦方向に捩じれます
  2. 両手は合掌の様にパターを左右から掴み、両腕は自然の形で脇がやや開き、両肘を結ぶ線は打出し方向と平行にします。


5.パッティング

                        右手首を安定させる方法(縦方向に若干捩じる)
  • パターの自重で吊り下げたまま、パターへッド重心がボール中心位置にある事を確認します。
  • 両肩の動きで狙った方向の真後ろにヘッドを引きます。振り幅が大きい場合は右肘を曲げて、右腕でパターを引き上げます。
    リズムでバックスイングすると振り幅に関係なく、一定時間内で所定位置までパターヘッドの引上げ動作を完了します。

    両肩で目的のバックスイング位置まで回転させたら一瞬止めて、パターヘッドの自重でダウンスイング動作に入ります。
      
  • ダウンスイングは両肩・腕とパターを一体にして振り下し、軌道上のボールを狙います。
    バックスイング量を大きくとる為に右腕でパターを引き上げているときは、ダウンスイングで真っ先に右腕が下がり始め、両肩の可動範囲に入って正規の振り子に戻ります。
  • ダウンスイングからフォロースイングに切り替わる時、左肩でパターを引き上げると共に右腕の上昇運運動で、加速されたパターヘッドのトップスピードをボールに伝えます。 (ただし両肩・腕とグリップ位置は一体で動きます)
  • ボールを打った後は左肩・肘でパターを引上げ、右肘・腕でパターを送り出して、バックスイングと同等以上のフォロースイングを取ります。


6.スイング安定策のチェック項目
チェック項目

1)振り子の回転軸は水平にして、ヘッド軌跡を地面に対し垂直面内に納め、バックスイングの駆動力は体幹(肩)の捩じりです。
(縦振りによりヘッドの直進性を高めます)

2)背骨は打出し方向に対し直角、左右の肘(又は肩)を結ぶ線は平行にします。
(打出し方向を定めた時の右腕の姿勢を維持します)

3)パッティングの構えを横から見ると、握力が低い為に腕(小手)とパターは一直線に揃います。
(両手首は軽く縦方向に捩じられ、手首の角度変化を抑えます)

4)左右の手でグリップを横から掴み、グリップを持つ両腕の開き角度は常に一定です。



7.スイングの注意事項(オーバーラッピング方式)
<傾向>

  1. バックスイング初動の時に左肩の動きが悪いと、左手首の角度が右手に引かれて解放し、ヘッドフェースが開いたままダウンスイングに入るため、右方向に打ちだされます。このケースが圧倒的に多いです。
  2. ダウンスイング初動の時、グリップの動きがヘッドより早いと、ヘッドフェースが開いて右方向に打ち出されます。一般に打ち急ぐとこの現象が生じます。
  3. ダウンスイング中間部で、左手がブレーキになって右手が先に行くと、ヘッドフェースが閉じて左方向に打ち出されます。右腕で打ちに行くとこの現象が生じます。
  4. ダウンスイング中間部で、左手がブレーキになって右脇が閉まると、ヘッドフェースが開いて右に打ち出され、距離も出ません。

<対策>

  1. バックスイングは先ず上がっている左肩から下ろし、次に右肩・腕を一体にしてパターを引き上げる様にします。基本は両肩の回転です。
  2. バックスイングからダウンスイングの切り返しの時、パターヘッドが下りるのを一瞬待ち、手首に負担無くヘッド重量で加速させます。
    (ヘッドが重いと慣性も大きく、ダウンスイング起動時に右手首が曲り、角度が開いたままボールを打つ為です)
  3. 両腕は常に一体で回転させます。左腕駆動もしくは右腕駆動等の個別の動きは避けます。
  4. 前屈み30〜40度にして回転軸を水平、肩回転をスムーズにする一方、パターヘッドの動きに同期してスイングします。



8.補足


スイングを振り子にすると周期は計算されます。この周期をベースに振幅を変えて、パッティングの距離をコントロールするのが、DMMPの基本概念です。

最初はメトロノームを使い、パターを右腕1本で振ってみて、ご自身の周期を確認します。次にその周期を乱さないように左手でグリップを軽く掴み、軌道の安定化とダウンスイングの加速感を得ます。

次に実際にリズムを取りながら、ボールを目標の推奨バックスイング量で打ち、方向と距離を確認します。

実はこの周期が「一番疲れない歩きの
リズム」と非常に近いことが分っております。プレー中は背筋を伸ばし、大きく腕を振って歩きましょう。


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